「アットホームな会社です」が一番危険
採用サイトや求人票を見ていると、今でも時々見かけます。
「アットホームな会社です」
昔からある定番の表現です。
でも私は、この言葉を見ると少し身構えてしまいます。なぜなら、その会社のことが何一つ分からないからです。
以前、採用の打ち合わせでこんなことがありました。
社長に、「御社の魅力は何ですか?」と聞くと、「うちはアットホームな会社なんですよ」と返ってきました。
そこで、「具体的にはどういうことですか?」と聞くと、今度は言葉が止まるんです。
実はここが大事なところです。
アットホームという言葉は便利です。便利すぎるんです。
仲が良いという意味にも使える。
面倒見が良いという意味にも使える。
風通しが良いという意味にも使える。
社員旅行がある会社でも使える。
飲み会が多い会社でも使える。
つまり、何にでも使えてしまう。
だから伝わらないんです。
求職者の立場で考えてみてください。
知らない会社から、「うちはアットホームです」と言われても判断できません。
むしろ最近は、「距離感が近すぎる会社なのかな」と警戒する人もいます。
昔は魅力だったものが、今はそうとは限らないのです。
採用の仕事をしていると、本当に面白いと思うことがあります。
アットホームと言う会社ほど、実は魅力的な話をたくさん持っているんです。
新人が失敗した時に先輩がフォローしてくれた話。
子どもの行事を優先させてくれた話。
お客様との長い付き合いの話。
20年以上働いている社員の話。
ところが、それを全部まとめて「アットホーム」で片付けてしまう。もったいないと思います。
求職者が知りたいのは言葉ではありません。
その会社の日常です。
どんな人が働いているのか。
どんな会話があるのか。
困った時にどうなるのか。
新人はどう育てるのか。
そこが見えた時に初めて、「自分に合いそうだな」と判断できるのです。
そんなことを考えていた時、以前大学生たちと就職活動について話をした際のことを思い出しました。
それがこんな言葉でした。
「アットホームかどうかは、会社訪問をして私たちが感じることなんです」
「それを会社側が言ってしまうと、なんだか興醒めするんですよね」
さらに別の学生も続けました。
「風通しが良さそうだなと思うのも、私たちが判断することだと思うんです」
その場にいた学生たちも、「そうそう」と大きく頷いていました。
私は思わず、「なるほどなぁ」と感心してしまいました。
会社の魅力がないのではありません。魅力をひと言で済ませてしまっているだけなのです。
アットホーム。
便利な言葉です。
でも採用では、その便利さが危険なこともあります。求職者が知りたいのは評価ではありません。事実です。
どんな人がいて。
どんな出来事があって。
どんな考え方を大切にしているのか。
そこを伝えた結果として、「アットホームな会社ですね」と感じてもらえるなら、それが一番自然なのではないでしょうか。